春の味覚を代表する野菜、えんどう豆―。
なかでも、香り高く甘みが特徴の『紀州うすい』は和歌山が生産量日本一を誇る伝統野菜です。
紀州・みなべ町でえんどう豆農園を営む川西省吾さんに農園のあゆみと『紀州うすい』にかける想いをお聞きしました。
[前編]

明治時代、アメリカ原産のえんどう豆を大阪の碓井(うすい)地区で栽培されたことからその名が付いたうすいえんどう。その後和歌山で栽培が盛んになり、品種改良を経て選ばれた優れた品種のみが『紀州うすい』として生まれました。

「甘さ、コク、溶けるような皮の柔らかさ、食べた後の余韻… 『紀州うすい』は、ほかのえんどう豆とはまったく特徴が異なります。僕は毎日畑に入ったら、必ず生でかじって味を確かめて、苦みや雑味、青臭さがないかチェックしているんです。一般的なえんどう豆は青臭さや苦味が強く、とても生で食べられるものではありませんが、川西農園の『紀州うすい』は豆が苦手な子どもたちでも喜んでパクパク食べてくれます」

また、鮮やかな緑色の大粒の実も『紀州うすい』の特徴。
たっぷりと日光を浴びることで、サヤの中にぎっしり詰まった風味豊かな豆が出来上がります。

「栽培中、えんどうの背丈は2メートルを越すほどに大きくなります。まんべんなく日が当たるようにするためには、整枝作業が欠かせません。手のかかる作業ですが、丁寧にやることで一級品の大粒の豆に育つのです。通常、1kgのえんどう豆を収穫したら、サヤから外して残る中身は350g程度です。ところが川西農園の『紀州うすい』は、500gくらいは残ります。それだけ実が大きくて、栄養もぎゅっと詰まった豆なんですよ」

たんぱく質やβカロテン、ビタミンB1・B1・C、カリウム、食物繊維、鉄分… 美味しいのはもちろん、健康に必要な栄養素もしっかり含まれている『紀州うすい』。川西さんがおすすめする食べ方とは?

「まずは生食で、甘みや風味の差を感じてみてほしいですね。それから、豆ご飯もぜひ味わってほしいです。食塩ではなく岩塩や天然塩を使い、サヤからもだしをとってご飯を炊くときに加えると、食べた瞬間に豆の風味が広がって絶品ですよ。また、サヤごと直火で焼き上げる『焼きうすい』もおすすめ。じっくりサヤの中で蒸し焼きにされることで、ホクホク甘い焼き芋のような風味が楽しめます」

「自分の子どもたちに胸を張って食べさせられることが何より」と語るように、美味しくて、安心・安全なものにこだわりぬく川西さん。最後に、生産者としての信念を問うと―。

「農家として生き残るには、自分の信じた道を貫くしかないと思っています。もちろん、大変な道のりですよ。有機栽培をはじめた当初も、それまで化学肥料を使うのが当然と考えていた父との対立が絶えませんでした。実際、高度経済成長期は大量生産のために全国どこの畑でも化学肥料を使うのは当たり前だったんです。でも、毎日欠かさず味見をして研究を重ねたら、丁寧に作った野菜のほうが美味しいことは明らかでした。家庭菜園を始める方も、化学肥料を入れた野菜とそうでない野菜の2つを育てて食べ比べてみたら、きっと違いが出ると思います。そういう意味でも、野菜作りは子育てに似ているのかな、と。自分がやったことの答えは必ず返ってくるし、間違った育て方をすれば間違った結果になる。そこを実感できることが、一番の楽しさだと思うんですよね」

※ 特別栽培農産物:
農薬使用量を通常の半分以下に減らし、なおかつ化学肥料の使用も半分以下に減らした栽培方法で、県指定団体の確認検査に合格した農産物のみに与えられるもの。

川西農園園主/川西省吾さん

やさしさと安心の食を大切に、自家農園で紀州うすいと南高梅の生産を行う。
減農薬・有機露地栽培で作った紀州うすいは、和歌山県の特別栽培農産物の認定を受けている。

川西農園HP
http://minabe.ocnk.net/

川西農園園主/川西省吾さん